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家を買いたくなったときの推薦図書『ニュータウンは黄昏れて』【書評】

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家を買いたい、特に、マンションを買いたいと思っている方におすすめの本を発見しました。

まつだ
推薦図書というより、課題図書という感じ

人口減少が止まらない日本において、とても参考になる本だと思います。

特に、下記のような方におすすめです。

  • 郊外マンションの購入を検討している方
  • マイホーム予算を極力抑えたい方
  • バス便の物件を検討している方

不動産関係の本は、どうしても小難しい本が多いと感じるのですが、難しい話もドキュメンタリー調なのでサクッと読めました。登場人物の心情がとてもリアルに書かれていて、感情移入して一気に読めると思います。

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

垣谷 美雨
880円(04/25 05:33時点)
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あらすじ

Amazonの内容紹介では、このように書かれていました。

ニュータウンは黄昏て
出口なし、人生も台なし! ローン地獄、建替え問題、娘の将来……「住」に翻弄される家族の真っ暗な現実を描く長篇小説。バブル崩壊前夜、都心から1時間の分譲団地を購入した織部家。広大な敷地には緑があふれ、「ニュータウン」と持て囃されたが、築30年を越え、妻の頼子は理事会で建替え問題にかかわる。が、住民エゴで理事会は紛糾、娘の琴里は資産家の男とつきあい、一家は泥沼から脱出を試みるが……。社会問題を炙り出す気鋭の長篇エンターテインメント。

郊外の築古マンションの物語。時代の移り変わりとともに住人を取り巻く環境も変わり、いろいろと考えさせられる話です。若干ネタバレしてしまいますが、この本を読んで勉強になった点をご紹介します。

立地は大事。バスを使う物件は資産価値が急落


舞台は郊外のニュータウン。バブルが弾ける直前に5200万円で購入し、中古で買った4LDKはみるみる価格が下がり売っても1500万円にしかならない……金利6.4%に苦しみながら返済をがんばる主人公の頼子。

  • 購入価格 5200万円
  • 売却査定価格 1500万円
  • 住宅ローン金利6.4%
まつだ
今の住宅ローン金利を考えると、恐ろしい金利!
住宅ローン博士
バブルの頃は、住宅ローン金利が5%~6%だったのじゃ
まつだ
返済しても利息に消えそうだ

マンションの立地は、最寄り駅から徒歩25分。バスを使うしかない中古マンションは、買い手も借り手もつかず八方塞がり……。
物語に登場する家族は、通勤・通学に疲弊し、いつも終電を気にしながら生活をしていました。

まつだ
めちゃめちゃリアルです

駅から遠くなればなるほど、購入価格は下がります。
予算が多くないと、どうしても、立地を妥協してしまいがちですが、通勤通学は毎日のこと。駅から25分、往復で50分。駅近の物件と比べると毎日1時間も多く、通勤通学に時間を費やしていると言えます。

まつだ
1日1時間。1ヶ月で30時間、1年で365時間……

この1時間で、家族とくつろぐ時間を買うのか?自分の好きな趣味の時間にあてるのか?選択次第で、毎日の暮らしがより楽しくなりそうですね。
立地は、自分の力ではどうしようもないこと。家を購入する際は、絶対妥協すべきことではないな……と、改めて感じました。

マンションは共同生活。他の住人との人間関係も大切


物語のなかでは、マンションの住人同士の苦労も描かれています。

主人公の頼子は、マンションの管理組合の理事をやり、さまざまな問題に直面します。現実の世界でも、マンションによっては、住民の当番制で管理組合の役員を任されることがあります。世代も仕事も家族構成も違う人たちで運営するため、上手に運営されているマンションは少なく、マンション管理も課題が多いです。

マンション管理組合の課題や問題点は?|みんなの住まい

物語の中でも、困った住人が紹介されていました。

  • 理事メンバーのひとり、高齢世帯の息子が引きこもり
  • 鳥の餌やりが生きがい
  • その住人が住む棟は鳥の糞だらけ
  • 洗濯物も干せず、引越す人が続出
  • 転居する人も多く空室だらけ

こんな困った状態ですが、理事メンバーはこの住人にクレームを言う人は誰もいなく、むしろ、「大変ねぇ……」と、同情する人ばかり。

まつだ
マジか……

主人公は中古マンションとして購入し、引越してきましたが、理事メンバーは新築時に購入した人も多かったようです。同世代の団結力があり、困った入居者に、文句が言えない状況が描かれていました。

不動産屋はやっぱり口がウマイ

ところどころで不動産屋が登場するのですが、どこの業者も口が達者です(笑)

  • 「ついこないだまで6000万円していたこのマンション!今なら、5200万円!底値ですよ!」という甘い言葉と裏腹に、現実はバブルが弾け大暴落する直前だった……。
  • 「都心まで30分!始発駅だから読書をしながら通勤できますよー」うたい文句の実態は、3年後に新駅が誕生。都心まで30分でいけるのは特急乗車時で、朝のラッシュ時には特急は運行していなく都心まで50分。

不動産業界に限らず、セールストークはどこでも使われます。
虚偽のアピールは違法ですが、小説で紹介されているセールストークは嘘ではないため、一般的に、よく使われています。

住宅ローン博士
セールストークが本当かどうか、自分の目で確かめるのじゃ

不動産会社の言いなりになって、マンション購入をして「こんなはずじゃなかった!」と、泣いてもお金は返ってきません……。

まつだ
不動産会社は家を売ることが仕事……

物語の中でも、不動産会社のセールストークを信じてマンションを購入し、満員電車の通勤に疲れ果て、休日は寝てばかりのお父さんが描かれていました。
郊外のマンションでは、「あるある」のお父さんかもしれません。それでも、住宅ローン返済のために、毎日がんばるお父さんの姿は少し切なかったです。

まつだ
マンション購入では、メリット・デメリットの見極める力が大事

子育て世代と高齢世代。世代が異なる入居者と共同生活は大変


新築から入居している高齢世代と、あとから引越してきた子育て世代。世代が異なる入居者が共同生活を送る苦労が描かれていました。

  1. (高齢層)新築分譲売出時に購入した方
  2. (中年層)中古マンションとして購入した方
  3. (若年層)売却価格が下がり最近購入した方

マンションは長期間入居者が共同して運営していくもの。予算がないと修繕計画も充分にたてられません。高齢世代と子育て世代では、建物のメンテナンスの考え方も異なり、ライフスタイル、世帯収入も異なります。

そのなかで、マンション管理・運営において、1つの答えを出していく大変さが描かれています。

フィクションだけでなく、実生活でも、世代が異なる入居者のマンショントラブルは多くなってきています。

高齢化社会の日本ではこのような問題は、これからもっと増えてくると思います。
子育ても、介護も、誰にとっても身近なことで、みんなで理解し、支え合いながら解決できたら良いのですが、なかなか難しいのが現状。世代が異なるマンションでは、トラブルに発展しやすいことは覚えておいた方が良いですね。

まつだ
マンション購入前に他の入居者の情報がわかれば良いけど

マンションの住民の情報は個人情報になるため、詳細を教えてもらうことはできません。
近所の方に聞き込み調査をしたり、近所のスーパーや公園で、どのような方が利用しているか年齢層をチェックするなど、購入前に自分で調べなければなりません。

内覧や周辺環境の確認も、朝・日中・夜と、時間帯を分けて行えるとベスト。できる限り、情報を集めて判断していきましょう。

まつだ
結局住んでみないと、わからないから困る

マンションは、どうしても他の住民の方との関係によって、生活の満足度が変わります。
隣の方、上下階の方は、特に影響を受けやすいので、注意して調べていきましょう。

マンション購入の失敗例として参考になる一冊

この本を一言でまとめると「郊外マンションの購入失敗物語」
マンションは長期間に渡り運営されていくもので、購入時期によって、同じマンションでも住み心地は変わります。

特に、郊外のマンションは資産価値が急落することがあり、購入者の世帯年収もライフスタイルも変わっていきます。

まつだ
いつ購入するか?難しい問題だ……

マンションの購入は人生で一番大きな買い物。失敗しないためには、多くの知識・情報が必要です。フィクションですが、とてもリアルにマンション購入後の悩みが描かれている「ニュータウンは黄昏れて」は、勉強になることがたくさんあります。

特に、駅から離れた郊外マンションの購入を考えている方は、ぜひ、購入前に読んでいただきたいです。

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

垣谷 美雨
880円(04/25 05:33時点)
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以上、「家を買いたくなったときの推薦図書『ニュータウンは黄昏れて』【書評】」をお届けしました。

マンション購入を検討している方の参考になれば、嬉しいです。

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