住宅ローンでは聞き慣れない言葉が登場して、よくわからないことが多いです。今日はその難しい用語のひとつ「担保提供者」についてご紹介します。
- 担保提供者って何?
- 担保提供者は連帯保証人とは違うの?
- 担保提供者のデメリットは?
- 担保提供者のメリットは?
について、ひとつひとつご紹介します。住宅ローンの商品概要や説明書に小さく書かれていることが多いので、しっかりと確認してみたいと思います。
目次
担保提供者とは?
担保提供者とは、万が一、住宅ローンの返済ができなくなってしまったときに抵当権が設定されている担保物件(土地や建物)を提供する人のことをいいます。
家を購入する場面では、担保提供者はマイホームを手放すだけの人です。夫が契約者としてひとりで住宅ローンを契約する場合、住宅ローンの返済義務は夫にあります。一緒に住んでいる妻は返済義務はありません。
しかし、妻が担保提供者になる場合、万が一、住宅ローンの返済が滞りマイホームが競売にかけられてしまうときは、妻は担保提供者としてマイホームを手放さなければなりません。
担保提供者はあくまで担保を差し出すだけなので、夫婦ふたりで住宅ローン契約をするケースや、妻もしくは夫が連帯保証人として契約するケースは、また別の話になります。
担保提供者と連帯保証人の違い
担保提供者と似た言葉で、「連帯保証人」という言葉があります。
連帯保証人は担保提供者よりも責任が重く、債務者(住宅ローンの契約者)とともに、住宅ローンの返済義務があります。例えば、夫と離婚して今は一緒に住んでいなかったとしても、連帯保証人であれば住宅ローンの返済義務を負います。
夫が契約者の場合、「夫婦なんだから」と妻が連帯保証人になるケースも珍しくありません。妻としては、「夫が契約者なのだから、基本的に夫に請求が行くでしょ」と考えているかもしれませんが、連帯保証人は債務者(住宅ローン契約者)と同じ返済義務を負います。
夫が支払わなかった場合、連帯保証人の妻にも同様に請求が来ても文句は言えません。「夫に請求してよ!」と反論することは、連帯保証人には認められていないからです。担保提供者はこのような義務はなく、マイホームを手放せば責任を果たしたことになりますが、連帯保証人は住宅ローンを完済するまで返済義務があります。
担保提供者は物上保証人
「連帯保証人」や「物上保証人」……同じ保証人じゃない!?!!と、紛らわしい言葉が続きます。連帯保証人も物上保証人も同じ保証人ですが、役割が全く異なります。
物上保証人は、返済ができなくなったときに家を手放さなければなりませんが、住宅ローン債務の返済義務はありません。家を差し出して終了!この点が連帯保証人とは異なります。担保提供者は「万が一のときは、抵当権に設定されているマイホームを差し出します」とい役割なので、物上保証人と呼ばれます。
物上保証人は連帯保証人とは違い、住宅ローンが返済できずマイホームが競売にかけられるときでも、担保として提供したマイホームを失うことはあっても、それ以上の責任を負うことはありません。
保証会社がついているのに、妻が担保提供者になる理由
銀行によっては住宅ローンの審査結果で、妻が担保提供者になることを求められるケースがあります。夫だけの単独名義で住宅ローンを契約するのに、なぜ、妻が担保提供者として名前を入れなければいけないの?と少し不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
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契約例
- 夫:契約者
- 妻:担保提供者
- 連帯保証人:保証会社
例えば、妻が諸費用の一部を現金で出したため、取得するマイホームの一部を妻名義で登記する場合、マイホームは夫と妻の共同名義(共有)となります。
最後まで返済が滞ることなく完済したら、全く問題がないのですが、万が一、住宅ローンが払えない状況になってしまった場合……銀行は、抵当権に基づいて家と土地を差し押さえます。
土地と建物は競売にかけられ、売却代金を住宅ローンの返済に充当されます。この場合、夫は契約者なので、家を取り上げられても文句が言えません。しかし、妻は契約者ではないので、自分の持ち分については銀行に自分の持ち物と主張することができます。
このような主張を妻がした場合、銀行としては土地と建物の一部を取得することができないため困ってしまいます。そこで、妻は担保提供者になることを住宅ローンの融資条件につけます。
妻が担保提供者になると、万が一、住宅ローンの返済が滞ってマイホームを競売にかけるときは、妻の持ち分についても担保提供者として銀行に差し出さなければなりません。
妻が仕事をしていない専業主婦であっても、当然、担保提供者になることは求められます。銀行としては、万が一のときに備えて、土地と建物をしっかりと自分の物にできるよう対策をとっています。このため、抵当権を設定する土地や建物が共有名義の場合、共有所有者は担保提供者になることが求められています。
銀行によっては、担保提供者は連帯保証人を兼ねることも
金融機関によっては、「担保提供者は連帯保証人を兼ねる」と明記されているケースもあります。この場合、担保提供者は、抵当権が設定されたマイホームを手放すだけではダメ。連帯保証人として契約者とともに、住宅ローンの返済義務が発生します。
不動産は高額なこともあり、競売にかけられマイホームを売却しても売却価格が、住宅ローン残高より安くなってしまうこともあります。
その場合、家を売っても残ってしまった住宅ローン債務は、債務者(例:契約した夫)と連帯保証人(例:妻)が一緒に返済する義務があります。
担保提供者の責任 | 担保提供者 兼 連帯保証人の責任 |
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マイホームを手放す | ◯ | ◯ |
住宅ローンを返済する | ✕ | ◯ |
担保提供者はマイホームを手放して終了でしたが、連帯保証人は住宅ローン完済まで返済の義務があることが、担保提供者と連帯保証人の大きな違いです。
妻が担保提供者になるデメリット
妻が担保提供者になるデメリットとしては、万が一、住宅ローンの返済が滞り抵当権が実行されて家と土地が競売にかけられる場合は、妻もその家に住み続けることができません。担保提供者として、自分の持分も銀行へ差し出すことになります。
また、担保提供者だけなのか、担保提供者は連帯保証人を兼ねるのか?によって、責任の範囲が大きく異なるので要注意。必ず、契約前に担保提供だけで良いのか?連帯保証人も兼ねているのか確認しておきましょう。
一般的に、担保提供者にならなければ住宅ローンを借りられないことが多いので、担保提供者になるデメリットよりも、担保提供者にならずに住宅ローンを借りられないデメリットの方が大きくなるかもしれません……。ご夫婦でよく確認してから住宅ローン契約に進みたいですね。
ちなみに、共働きで夫婦で住宅ローンを利用しようと考えている方は関連記事もあわせてご覧ください。
妻が担保提供者になるメリット
基本的に、担保提供者になるメリットはありません。
しかしながら、担保提供者にならないと住宅ローンを借りることができないケースが多いので、担保提供者にならざるを得ないのが現状です。
まとめ
担保提供者はマイホームを手放せば終わりですが、連帯保証人は住宅ローン完済まで返済義務があることが大きな違いでした。担保提供者が連帯保証人を兼ねる場合は、安易に契約をしてしまうと将来大変なことになってしまう可能性があります……。
住宅ローンはよくわからない言葉が多く不安になってしまうかもしれませんが、わからない言葉は時間がかかっても融資担当の方に確認をしてから、手続きを進めるようにしましょう。
以上、「担保提供者とは?住宅ローン契約時に、妻が担保提供者になるデメリット」をお届けしました。住宅ローンを検討している方の参考になれば幸いです。
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