住宅ローンで迷うのが変動金利でいくか、固定金利でいくか?マイホーム購入時に誰しも悩む問題のひとつです。
友人のMちゃん夫妻は3歳の子供が小学校に上がる前にマイホーム購入を検討していて、住宅ローンについても勉強をはじめたそうです。
住宅ローンなんて人生で使うのは数える程度。仕事や育児で追われる毎日なのに、住宅ローンをじっくり検討したくてもよくわからない……その気持ちよくわかります。
多忙なMちゃんにかわって、今日は、住宅ローンの変動金利・固定金利、どんなメリット・デメリットがあるのか?どちらを選んだ方がいいかを検討してみたいと思います。
目次
変動金利・固定金利とは?
住宅ローンにはさまざまな商品があります。金利で分けると「変動金利型」「固定金利型」「固定金利選択型」「フラット35」などがあります。
ざっくり言うと、変動金利とは金利変動にあわせて返済額が見直されるものを言います。固定金利型は借入時の金利が返済期間ずっと続くもの。固定金利選択型は3年、5年、10年などの一定期間の金利を固定し、期間満了後に金利タイプを再び選択するものを言います。フラット35は、固定金利型の代表格で、最長35年の全返済期間の金利が一定となっています。
住宅ローンの金利は、短期プライムレートや長期プライムレートに連動して決められることが一般的。将来、金利が上がるか下がるかは誰も正確に予想することができません。
金利上昇リスクを、誰が負担するかによって住宅ローンの商品設計は変わります。
金利上昇リスク
- 変動金利型
・・・・借主が負担
- 固定金利型
・・・・金融機関が負担
変動金利型は金利上昇リスクを借主が負担します。このため固定金利型よりも低金利で融資を受けることが可能です。
一方、固定金利型の金利上昇リスクは金融機関が負担します。どんなに金利が上昇したとしても、固定金利型は融資実行時の金利が返済期間ずっと変わりません。このため、金利は変動金利型よりも高めに設定されます。
フラット35とは?
固定金利型の代表格がフラット35。住宅ローンのことを調べたことがある人は一度は名前を聞いたことがあると思います。
フラット35は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して実現した長期固定金利の住宅ローンです。主に短期の資金で資金調達を行う銀行などの民間金融機関は、長期固定金利の住宅ローンを取り扱うことが難しいとされています。
そこで、住宅金融支援機構は、フラット35を取り扱っている数多くの民間金融機関から住宅ローン(フラット35)を買い取り、それを担保とする債券を発行することで長期の資金調達を行い、民間金融機関が長期固定金利の住宅ローンを提供するしくみを支えています。
引用:住宅金融支援機構
つまり、フラット35は住宅金融支援機構がバックアップしている住宅ローンです。固定金利型の住宅ローンは金融機関が金利上昇リスクを負担するため、金融機関にとって扱いにくい商品でした。そこで、住宅金融支援機構と民間の金融機関をサポート。銀行などの金融機関が融資した住宅ローン債権を買取・証券化することで、金融機関が長期固定金利型の住宅ローンを供給しやすくなりました。
フラット35と固定金利型住宅ローンとの違い
- 団体信用生命保険の加入が任意
- 保証料、連帯保証人が不要
- 派遣社員や自営業の方も申込み可能
- 住宅金融支援機構独自の基準を満たす建物に適用できる
- 住宅購入の諸費用(手数料、保証料等)には利用できない
団体信用生命保険の加入が任意
フラット35は団体信用生命保険(以下、団信)の加入が任意となっています。民間の金融機関では団信の加入は必須条件。フラット35で団信に加入するには別途費用が必要になります。
「(自分に)万が一のことがあっても、家族に家だけは残せる……」
と、団信に加入する方は多いです。
フラット35の団信特約料はローン残高の0.358%の金額を毎年1回支払います。フラット35(借入額3000万円、固定金利1.1%、元利均等返済で35年間借りた場合)の団信保険料の目安は、204万1,200円です。
※2017年1月現在
※住宅金融支援機構シュミレーションサイトを利用
毎年1回、団信保険料の支払いが必要です。民間の住宅ローンは団信への加入が必須となっていて、保険料は金利に0.3%程度すでに上乗せされて設定しています。このため、団信の特約料(保険料)を別途準備する必要はありません。
保証料、連帯保証人が不要
フラット35は保証料、連帯保証人が不要です。
保証料はネット銀行では不要なところも多いですが、住宅ローン金利に0.2%~0.3%程度、金利が上乗せされることが一般的です。
派遣社員や自営業の方も申込み可能
フラット35は他の住宅ローン商品より審査要件が緩和されています。銀行などの金融機関の場合、住宅ローン商品に申込みができる要件として、年収400万円以上、勤続年数1年以上などが設定されていることがあります。
しかし、フラット35は規定の返済負担率(年収に対する住宅ローン返済額)をクリアしていれば、誰でも申込むことが可能です。
フラット35の申込要件(返済負担率)
年収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
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負担率の基準 | 30%以下 | 35%以下 |
(2012/10/19 日本経済新聞)
フラット35、民間の審査に甘さ 検査院が指摘
会計検査院は19日、独立行政法人の住宅金融支援機構が手がける長期固定金利型の住宅ローン「フラット35」について、機構と提携する民間金融機関の一部で甘い審査が行われているとして、機構に金融機関の指導を求めた。39の提携機関を抽出して調べたところ、機構が求める融資審査の基準を全て満たす金融機関はなかったという。
フラット35を巡っては、勤務先や収入を偽って融資金をだまし取る詐欺事件が相次いでいる。融資審査は提携金融機関が行うが、機構がローン債権を買い取る仕組みのため、詐欺に遭っても金融機関に被害は発生しない。
(以下略)
引用:2012年10月19日 日本経済新聞
フラット35は多くの銀行などの金融機関で取り扱いがありますが、金融機関独自の商品ではありません。住宅金融支援機構がサポートしてくれていて、いわば、銀行などの金融機関は代理店としてフラット35を販売している状況です。
万が一、融資した資金が回収できなかったとしても銀行などの金融機関が責任を負いません。住宅金融支援機構が住宅ローン債権を買取ってくれるからです。
フラット35は良質な住宅を広めていきたい、という意図があり、より多くの方に住宅ローンを活用していただけるよう、銀行などの民間金融機関と比べると審査要件も緩和されています。一方で、融資対象となる物件についてはさまざまな基準が設けられています。
住宅金融支援機構独自の基準を満たす建物に適用できる
住宅を建てる場合には、国が定めた最低基準「建築基準法」に適合させる必要がありますが、フラット35住宅は、住宅金融支援機構において技術基準を定め、物件検査を受けていただいています。併せて建築基準法に基づく検査済証が交付されていることを確認しています。
※ 物件検査に当たっては、物件検査手数料が必要で、お客様のご負担となります。
※ 物件検査手数料は、適合証明機関によって異なります。引用:フラット35公式サイト
一戸建て住宅等 |
マンション | |
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接道 | 原則2m以上、一般の道路に接していること |
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住居の規模 | 70㎡以上 |
30㎡以上 |
併用住宅の床面積 | 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 |
|
戸建型式等 | 木造の住宅は一戸建てまたは連続建てに限る |
|
住宅の耐震性 | 建築確認日が昭和56年6月1日以後※であること。 または、機構が定める耐震評価基準等に適合すること |
都内の50㎡未満の小さな土地に建てられる狭小住宅や、旧耐震基準時代に建てられた築古物件には利用利用することができません。
また、省エネルギー性、耐震性の基準を満たす住居の場合は、フラット35から金利が優遇された「フラット35S」を利用することもできます。
住宅購入の諸費用(手数料、保証料等)には利用できない
住宅購入時には土地や建物の値段以外にも、仲介手数料、登記費用、火災保険料、不動産取得税などなど、さまざまなお金がかかります。
物件価格にもよりますが、数百万円かかる諸費用。これらはフラット35で借入れることができません。銀行などの民間金融機関では諸費用込でローンが組めたり、諸費用ローンが存在します。
変動金利型のメリット・デメリット
変動金利型のメリット
変動金利型のメリットは、低金利です。住宅ローン商品のなかで最安値の金利は変動金利になっています。
とにかく安く住宅ローンを利用したい場合は変動金利がベストです。特に、高金利時代(固定金利型の住宅ローンの金利も高くなるため)や、金利が下がっている時期にメリットがあります。
金利が安ければ住宅ローンの総返済額も抑えられます。とても魅力的な変動金利型ですが、安易に変動金利型を選択するのは危険です。
変動金利型のデメリット
金利上昇時には月額返済金額が急上昇したり、125%ルールや5年ルールによって返済額が大きく変わらなくても、金利上昇分の利息が膨らみ返済しても元金が減らないリスクがあります。
変動金利型は、その名の通り金利が変動していきます。
もし、急激に金利が上昇してしまった場合、毎月の住宅ローン返済金額も急増することになり、一般の方の家計は大ダメージを受けます。
そこで、多くの変動金利型住宅ローンは適用金利と返済額の見直しに上限を設けています。
5年ルールと125%ルール
- 年2回、4月と10月(※1)時点の金融機関所定の金利に基づき、原則として7月と1月返済分から適用金利が見直される
- 適用金利が見直されたとしても、5年間は返済額が変わらない
- 返済額を変えずに、元金と利息の割合が調整される
- 金利変動に応じた5年ごとの返済額見直し時に、毎月返済額が上昇するときであっても返済額の上限は前回返済額の1.25倍(増加分は25%)以内とする
※ 上記原則が適用されない住宅ローン商品もあります
※ 1)基準日が異なる金融機関もあります

5年ルールと125%ルールのデメリット
一般的に、変動金利は5年ルール、125%ルールという返済額見直しの規定があります。
金利がどんなに上昇しても返済額が見直されるのは5年後(5年間は返済額が一定)であり、その上限は前回返済額の1.25倍までとなっています。
しかしながら、半年ごとの基準日に金利が上昇している場合、適用金利も上昇しています。つまり、毎月の返済額のうち利息支払い分が増え、元金は減らない状況となっているのです。
例えば、2000万円の借入れを行い、毎月8万円を返済しているケースの場合、金利が4.8%以上上昇すると、返済額はすべて利息に消えてしまいます。
★ 未払い利息が発生する金利の上昇
例)2000万円を毎月8万円ずつ返済している場合
- 月額8万円×12か月 = 年間96万円の返済
- 返済額96万円÷借入金額2000万円=0.048(=4.8%)
未払い利息が発生してしまうと、未払い利息がゼロになるまで返済金額は元金に充当されません。借入期間内に未払い利息が完済できない場合は、最終返済時に清算することになります。
毎月の返済額が変わらないから、と、金利動向のチェックを怠ると大変なことになります……。変動金利型は低金利のメリットと返済額増額リスクのデメリットをあわせもった住宅ローンです。
変動金利型でも5年ルール・125%ルールを適用しない銀行
2017年1月現在、変動金利型でも5年ルール・125%ルールを適用していません。金利が急上昇して返済額があがってしまうリスクを回避するために、どちらもインターネット上で変動金利型から固定金利型へ切り替え手続きをすることが可能となっています。
都市銀行や地方銀行などの住宅ローン金利
当月1日前後に発表
ネット銀行の住宅ローン金利
当月1日に発表
ソニー銀行の住宅ローン金利
前月15日頃に発表
ネット銀行で住宅ローンの契約に不安がある方は、こちらも参考になるかもしれません。
固定金利型のメリット・デメリット
固定金利型のメリット
固定金利型のメリットは返済金額が固定できるため、資金計画を立てやすいこと。住宅ローン以外にも子どもの教育資金や老後資金など必要になるお金はたくさんあります。
金利変動に関わらず、毎月の返済金額を固定できるため、その他の資金の使い方も計画しやすくなります。
固定金利型のデメリット
高金利時代に借入れを行うと、金利が下がっても高い金利のまま返済をしなければなりません。
また、借入時の金利は変動金利と比べると相対的に高くなっていることが多いです。金利上昇リスクは金融機関が負担することになるため、変動金利型よりも金利が高く設定されるからです。
固定金利選択型とは?
固定金利選択型は変動金利型と固定金利型を足して2で割ったような住宅ローン商品です。
固定金利選択型とは、金利動向が読めないときに、5年、10年、20年などの一定期間は固定金利型で様子を見て、その後、再度金利タイプを選べるものです。
2年、3年、5年などの比較的短かい期間のみ固定金利が適用されるタイプは低金利のものが多く、15年、20年と長期間、固定金利が続くものは高金利に設定されています。
固定金利選択型のメリット
金利動向が読みにくい場合に、一定期間固定金利型を適用することで様子を見ることができます。また、固定金利型・変動金利型どちらのメリットデメリットもあわせもっているので、変動金利型の金利上昇リスクを分散させることができます。
固定金利選択型のデメリット
固定金利選択型には、下記のようなデメリットがあります。
- 金利引き下げ幅の変更等により適用金利が上昇する可能性がある
- 固定金利期間終了後に再度固定金利を選択する際に手数料が発生する可能性がある
- 固定金利引下げ金利(優遇金利)が解消され金利が上がってしまう可能性がある

住信SBIネット銀行:金利例
当初引下げ型の場合、契約時の金利は一定期間のみの優遇金利です。期間満了後は金利が上がるので要注意。金利があがってしまってもお得になるか、それとも全期間固定金利を借りてしまった方がお得なのか?は、シュミレーションをしながら、繰上げ返済の可能性や、ご家族の資金計画にあわせて検討してみましょう。
また、基準金利は常に変動しているものなので、期間満了時に基準金利が大きく上がってしまう可能性もあります。借入時にシュミレーションをしていても、基準金利の上昇により返済額があがってしまうことになるため、借換えなども含めて考えていかなければいけません。
変動金利型と固定金利型の選び方
住宅ローンを借りるとき、変動金利型でいくか、固定金利型でいくか、一定期間だけ固定金利の固定金利選択型でいくか?自分にとって適した商品を選ぶのは悩みの種です。
住宅ローンの最安値は比較できない
一番お得な住宅ローンを探すには、金利を比較して最安値を探すことから始めてしまいがちですが、最安値の住宅ローンを比較することはできません。
金利が低く設定されているのは変動金利型の住宅ローンです。
でも、変動金利型の住宅ローンは金利動向にあわせて適用金利が変わります。住宅ローンは20年、30年など長期間の取引きです。金利が常に変動していれば、利息もあわせて動きます。金利が上昇したときは返済額のうち利息に充当される割合が増えてしまい、元金が減らない……というケースもあります。
利息が確定できないため、変動金利型は返済総額を算出することができません。つまり、変動金利型が得か、固定金利型が得かは、完済したときにはじめてわかります。
支払い金額の比較では、変動金利の方がお得に見えてしまうんだ。変動金利型のシュミレーションも、金利上昇を考えた試算になっているのは少ないはず
でも、営業の方が心配するのは契約がとれるかどうか?みんな生活がかかっているからね。
だから、自分の頭で考えて、本当に良い住宅ローンを選ばないといけないね
それでは、住宅ローンを選ぶときに便利な返済シュミレーションをやってみたいと思います。私はいつも、住宅保証機構の住宅ローンシュミレーションを利用しています。

住宅ローンシュミレーション
大切なことはリスクの考え方
変動金利型、固定金利型、固定金利選択型、固定金利型・変動金利型のミックス型か……住宅ローンの組み方はさまざまなパターンがあります。どのプランを選択するかは、金利上昇リスクの許容度によって選ぶと良いと思います。
- 金利動向をチェックしながら変動金利型で返済額を抑える
- 安心感を得るために全期間固定金利型で毎月の支払額を確定させる
- 間をとって、リスクもメリットも半分の固定金利選択型・ミックスか
変動金利型の今の金利だけを見て借入れをするのは危険です。金利が上昇したとしても問題なく返済できる余裕がある方や、金利動向を常に確認して、住宅ローンのプラン変更や借換えを検討できる方でないと、住宅ローン破たんリスクが高まります。
まとめ
変動金利型、固定金利型をはじめ慣れない住宅ローン商品を選ぶのは大変です。
でも、少しの差が数百万円もの差として表れてくるのが住宅ローン。面倒臭いことを少しだけ頑張れば、大きな節約ができます。不動産会社や銀行の営業マンの方の話を鵜呑みにして後悔しない選択をしないよう、自分の資金計画にあった住宅ローンが選べると良いですね。
住宅ローン商品を選ぶときの大切なポイント
家庭によってそれぞれ返済計画が異なります。銀行の融資可能額や返済負担率などの数字に縛られず、自分たちにとって、無理なく返済ができる金額はいくらなのか?まずは、収入と支出を見つめて無理のない資金計画を立てることが重要です。
Mちゃんのように、住宅ローンで変動金利型が良いか、固定金利型が良いか迷っている方の参考になれば幸いです。
今日も、ありがとうございました。